トリミングサロンのバックヤードで、作業着姿の日本人トリマーが一人静かに座って考え込んでいる様子

ペット業界を目指す人へ|動物が好きな人ほど、挫折しやすい仕事の話

先日、娘の中学校で職業講話があったそうです。
その話を聞いて、ふと思い出しました。

実は僕自身も、2022年に同じ中学校で職業講話を担当させてもらっています。
そのときの様子はこちらの記事にまとめています。
▶ https://note.com/onefordog/n/n5c3e5f3c7fa0

ただ、あらためて感じたのは、学校という場では、どうしても話しきれないことがあるということ。

そこで今回は、これからペット業界を目指す方や、すでに現場に立っている方に向けて、もう一歩踏み込んだ「 ペット業界 仕事 のリアル」を、記事としてまとめておこうと思います。

ペット業種は「動物が誰より好きなのに、一番動物から嫌われやすい仕事」

トリミング台の上で、日本人トリマーが犬のケアを丁寧に行っている仕事中の様子

結論から言います。

ペット業界、とくにトリマーという仕事は、動物が誰より好きなのに、一番動物から嫌われやすい仕事です。

トリマーは、犬にとって「嫌なこと(施術)」をしなくてはいけない仕事。
だからこそ、技術以上に心の在り方が問われます。

精神的にタフでなければ、長く続きません。
とはいえ、「犬が好き」という気持ちがあれば、咬まれようが、引っかかれようが、案外耐えられるものです。

問題は、相手が犬ではなく──
人間(飼い主)になったときです。

実は、トリマーはゴリゴリの接客業

トリミングサロンの受付で、日本人トリマーが飼い主とカウンセリングを行っている場面

接客業がしたかったら、美容師になっている。
犬が好きだから……
いや、人間が苦手だからトリマーを選んだ。

実際、そういう子も少なくありません。

ですが、現場はゴリゴリの接客業です。
飼い主さんとのコミュニケーション。
同僚、先輩、オーナーとの人間関係。

このギャップに耐えられず、業界を去っていく人は本当に多い。

50代以上の現役トリマーを、ペットショップで何人見かけるでしょうか。
職業病も理由の一つですが、若くして辞める最大の原因は、人間関係です。

なぜ、2年学んでもすぐ辞めてしまうのか

トリミングサロンの更衣室で、仕事終わりにスマートフォンを見つめる若い日本人トリマーの様子

では、なぜ彼ら彼女らは、2年間の学生生活を経てまで、すぐにドロップアウトしてしまうのか。

理由は、とてもシンプルです。

就職=夢が叶った

と思ってしまうから。
教育機関が設定しているゴールが、「トリマーになること」だからです。

ペットショップやトリミングサロンに就職した時点で、その人の夢は“達成”されてしまう。
すると、隣の芝生が青く見える。

週末、きれいな服を着てライブに行く友達。
自分は土日、汗だくで、髪もボサボサ。

やりがいだけで乗り越えてきたものが、人間関係の破綻で一気に折れる。
そして、「この仕事は合わなかった」という結論に至るのです。

本当は「手に職」なのに、戻らない人たち

自宅のダイニングテーブルで、トリミング用のハサミを手にしながら仕事について考える日本人女性の様子

トリマーは手に職です。
結婚や出産をしても、技術はなくならない。
本来なら、職場復帰もできる仕事です。

それでも戻らないOBOGがいる。
それは、この仕事の“現実”を知ってしまったから。

齋藤からのアドバイス

「独立開業に旗を立てて仕事をしなさい」

ここからは、僕からのアドバイスです。

独立開業に旗を立てて、仕事をしてください。

お店を開いても、開かなくてもいい。
ただし、ゴール設定を「就職」にしないでほしい。

「いつか自分の店を持つ」と思った瞬間から、日常業務はガラリと変わります。

接客、営業、経理、スタッフ指導。
すべてが経営に必要なこと。

無駄な仕事など、一つもありません。

むしろ、雇用されている間は、人のお金で仮説と検証、失敗までも経験できる、とても恵まれた時間です。

仕事の仕方は、年齢で変わる

自然光が差し込むトリミングサロンで、日本人トリマーが店内に立ち仕事に向き合っている様子

20代は、ただひたすらに技術を磨く。
30代は、技術を活かして指名を集める。
キャリアを積んだら、独立開業。
現役が辛くなってきたら、オーナー業やインストラクター。

トリマーという仕事は、旗の立て方次第で、いくらでも活躍できる仕事です。

学校は、本当のことを教えてくれない

「結局は人です」
なんて言ってしまえば、生徒はみんな辞めてしまう。

だから学校は、技術と知識だけを教える。
でも本当に大切なのは、心の在り方です。

あんなに犬が好きだったのに、時に犬を嫌いになってしまう瞬間もある。
そんなとき、「自分に嘘をついているな」と感じたら、ゴールがどこにあるのか、探してみてください。

追伸|動画でもお話ししています

この記事の内容は、YouTube「金曜よるの生配信」でも、実体験を交えながらお話ししています。

文章では伝えきれない
・言葉の温度感
・間の取り方
・当時の空気感

も含めてご覧いただけますので、よろしければアーカイブもあわせてどうぞ。

▶ 金曜よるの生配信|ペット業界を目指す人への職業講話
https://youtube.com/live/SXgArVqI2s8?feature=share