保護犬の里親会で、日本人家族が犬と出会い、温かく触れ合っている様子。屋外イベントのテントの下で交流している場面

保護活動と愛犬文化の未来|僕が考える“救う前に必要なこと”

近年、保護犬・保護猫に関する話題を目にする機会が増えました。
行政による「殺処分ゼロ」の取り組み、動物愛護団体による譲渡会や里親会、そしてテレビ番組などのメディア特集。これらはどれも「一つでも多くの命を救う」という尊い活動です。

けれど、僕はいつも違和感を覚えています。
それは「不幸な命が存在することを前提にしている」という点です。

【 今回のテーマ: 保護活動 愛犬文化 】不幸な命を生まない社会へ

劣悪な飼育環境から犬を抱きかかえて救助する保護活動スタッフ。錆びた檻やゴミが散乱する中、不安そうな犬を保護している場面

本来あるべきなのは、救助を必要とする命が生まれない状態
救うこと自体がゴールではなく、そもそも“救われる必要がない世界”を目指すべきだと考えています。

しかし現場はそう簡単ではありません。
日々あふれる悲惨な現状を、命を削りながら保護する従事者に「根本解決を考えろ」と言うのは酷です。だからこそ、別の立場にいる僕らが、原因そのものを正していく必要があるのです。

飼い主リテラシーこそが鍵

保健所のシェルターの通路に並ぶ犬舎。金網のケージの中で犬が座り、外を見つめている清潔な施設内の様子

だれしもが最初から犬を捨てたり虐待したりするつもりで飼うわけではありません。
多くの人は「愛犬と豊かなドッグライフを送りたい」と思って迎えるはずです。

けれど、衝動買いや知識不足から「こんなはずじゃなかった」が散りつもり、苦渋の選択を迫られるケースは後を絶ちません。

また、繁殖家の中には命の行き先を考えないままブリーディングを続ける人もいます。生体販売の現場では“命を吟味する”環境が用意されているわけですが、子犬にも「どの家族に託されるかを選ぶ権利」があることは、あまり意識されません。

だからこそ、飼い主リテラシーの向上が不可欠です。

「犬だから仕方ない」で終わらせない

トリミング中に嫌がって吠える犬。トリマーがバリカンを持ち、犬をなだめながら作業している場面

子育てで「うちの子は身なりを整えようとすると暴れるから、代わりにお願いできますか?」という話は聞きません。
でもトリミング業界では当たり前に存在します。

四六時中泣き叫ぶ子供がいたら、親はなんとか解決しようとするでしょう。
それなのに犬のこととなると「まぁ…犬なんで」と諦めてしまうのは不思議です。

犬は家族の一員ですが、人間社会の一員でもあります。

「自分の家庭さえ良ければいい」ではなく、他者への気遣いと振る舞いがあってこそ、愛犬家と言えるのだと思います。

しつけとお手入れは、飼い主としてのエチケット

公園で行われるドッグトレーニング。日本人トレーナーが指示を出し、犬がおすわりをして集中している様子

必要なのは、「しつけ=義務教育」「お手入れ=身だしなみ」という視点。
そのために僕たちプロがいる。

教育(学び)が根底にあることこそが、
保護活動、ひいては動物愛護の“一丁目一番地”ではないでしょうか。

愛犬文化フェスでの取り組み

そんな思いから、One for Dog が主催する愛犬文化フェスでは、里親会も誘致しています。
単に保護活動を支援するだけでなく、日本の飼育環境や課題を見つめ直し、教育や体験を通じて「愛犬文化」を育てていく場にしたいと考えています。

📅 第5回 愛犬文化フェス Supported by 無印良品 東武動物公園駅前
🗓 2025年11月1日(土)11:00–16:00
📍 無印良品 東武動物公園駅前

ぜひ現地で、愛犬とともに「学び」と「文化」を感じてください。