そもそも「ドッグショー」は、何のために行われているのか
今週末、2025年12月21日。
FCIインターナショナルドッグショー(JKC特別本部展) が開催されます。
ドッグショーと聞くと、
- 見た目の美しさを競うイベント
- 一部のブリーダーやプロの世界
- 一般の飼い主には縁がないもの
そんな印象を持つ方も少なくありません。
実際、ドッグショーには賛否がありますし、
すべての人が肯定的に捉える必要もありません。
ただ一方で、
なぜこれほど長い年月、世界中で続いてきたのか
という視点で見てみると、
少し違った側面が見えてきます。
今回は、
ドッグショーを知らない方に向けて、
その成り立ちと役割を、できるだけ俯瞰的に整理してみます。
ドッグショーの起源|始まりは「美しさ」ではなかった

ドッグショーの起源は、
1859年のイギリスとされています。
当時行われていたのは、
現在のような華やかなイベントではなく、
- しっかり走れるか
- 無理のない体をしているか
- その犬種として役割を果たせる体か
といった、実用性の確認が目的でした。
猟犬や牧羊犬など、
人とともに働く犬にとって、
体の構造は仕事の質や安全性に直結します。
「良い仕事をする犬は、体のつくりも合理的である」
この考え方が、ドッグショーの原点でした。
現在のドッグショーでも、
骨格や歩き方が重視されるのは、
この歴史的背景があるからです。
現代のドッグショーが担っている役割

現代のドッグショーは、
ブリーディングショー(繁殖評価の場)
と位置づけられています。
最大の目的は、
「犬種としての特徴を、無理なく次の世代へ残すこと」。
犬種標準(スタンダード)を確認する場
それぞれの犬種には、
体の大きさ、骨格、被毛、気質などを含めた
犬種標準(スタンダード) が定められています。
ドッグショーでは、
- 極端な体型になっていないか
- 健康面に偏りが出ていないか
- 犬として自然な構成か
といった点を、専門家が確認します。
これは単なる優劣を決める場というより、
犬種の方向性が大きくズレていないかを見直す機会
と捉える方が近いかもしれません。
家庭犬との関係性
ショードッグと家庭犬は、
まったく別の存在のように見えることがあります。
ただ、評価項目には
骨格の健全性や気質の安定性も含まれます。
結果として、
ショーで高く評価される系統が、
家庭犬としても暮らしやすい要素を持つことは、
決して珍しいことではありません。
JKCとFCI|日本と世界をつなぐ基準

日本でドッグショーを主催しているのが
JKC(ジャパンケネルクラブ) です。
1949年に設立され、
FCI(国際畜犬連盟) に加盟しています。
JKCは、
- 犬籍登録(血統書の管理)
- ドッグショーや競技会の開催
- トリマーやハンドラー等の資格認定
といった役割を担い、
日本国内の犬の基準を、国際基準と接続しています。
今回開催される
FCIインターナショナルドッグショー は、
その中でも最上位クラスの大会にあたります。
ドッグショーの見方|犬は「隣の犬」と競っていない
ドッグショーでよくある誤解のひとつが、
「犬同士が戦っている」というイメージです。
実際には、
目の前の犬は隣の犬と競っているのではなく、
犬種標準という“理想像”に照らして評価されています。
審査の流れ(簡略)
- 犬種ごとの審査
- 用途別グループ審査
- ベスト・イン・ショー(その日の代表犬)
見る側としては、
- 歩き方の安定感
- 立ち姿の自然さ
- 人と犬の呼吸
といった点に注目すると、
評価の意図が少し見えやすくなります。
FCIインターナショナルドッグショーという位置づけ
今回のショーは、
- 全国からトップレベルが集まる
- 評価ポイントが高い
- 年末開催で、年間を締めくくる意味合いが強い
という特徴があります。
競技としての緊張感を持ちつつ、
国内の犬文化の「現在地」を確認する場
とも言えるでしょう。
もうひとつの楽しみ方|会場に集まる“道具”たち

ドッグショー当日は、
犬たちだけでなく、犬具屋さんも数多く集まります。
- プロが現場で使っているトリミング用品
- ハサミ、ドライヤー、ブラシなどの実演販売
- 開発者や販売スタッフから直接話を聞ける機会
いわば、
現場仕様の道具が一堂に会する場所です。
今年のインターペットで
「人が多くて、結局よく見られなかった」
「ゆっくり話を聞けなかった」
という方には、
こちらの方が現実的かもしれません。
最後に|ドッグショーは「知ってから見る」と、少し面白くなる
ドッグショーに対する感じ方は、人それぞれです。
無理に肯定する必要もなければ、
特別視する必要もありません。
ただ、
- なぜ、これほど長く続いてきたのか
- どんな役割を担っているのか
- 今、どんな人たちが関わっているのか
そうした背景を少し知った上で会場を歩いてみると、
「思っていたのと違うな」と感じる場面が、
きっと出てきます。
難しいルールを理解していなくても構いません。
犬たちの歩き方や、ハンドラーとの呼吸、
会場の空気感を眺めるだけでも十分です。
まだ一度もドッグショーを見たことがない方は、
犬文化の現場見学くらいの気持ちで、
一度足を運んでみるのも悪くないと思います。
