トリミングサロンの閉店が増えている理由

トリミングサロン入口に貼られた「閉店のお知らせ」を見つめる飼い主さん。腕の中のトイプードルと共に、突然の閉店に戸惑う空気感を映したリアルな情景。 愛犬文化ジャーナル

“人気店なのに閉店”の裏側で起きていること

最近、トリミングサロンの閉店のお知らせを目にする機会が増えました。

しかもそれが、
「お客様が入っていなかったお店」ではなく、

“予約の取れない人気店”

だったりするから、なおさら驚きます。

「人気だったのに、なぜ?」

今日は、30年以上この業界を見てきた立場から、少し踏み込んだお話をしてみようと思います。

人材不足と言われていますが…

営業終了後の静かなトリミングサロン。夕陽が差し込む店内に、ハサミやバリカンが残されたままのトリミングテーブル。人の気配が消えた現場のリアルさと、時代の変化を感じさせる一枚。

まず結論から言えば、理由の多くは“人材不足”です。

ただし、ここで言う人材不足は、

「人が来ない」

だけではありません。
むしろ問題なのは、

“人が育ちにくい”

ということです。

ここが、今のトリミング業界の大きな課題なのではないかと、僕は感じています。

トリミング業界の“オーバースペック化”

トップトリマーによる実演を真剣な眼差しで見つめる若いトリマーたち。技術を追い求め続ける、現代トリミング業界の熱量とプレッシャーを感じる勉強会風景。

これはあくまで僕の仮説ですが、
今のトリミング業界は、少し“オーバースペック”に振れすぎたのではないかと思っています。

どういうことかというと、

「もっと上手く」
「もっと綺麗に」
「もっとデザイン性を」
「もっと独創的に」

という流れです。

もちろん、技術を磨くこと自体は素晴らしいことです。
みな職人さんですから。

より高みを目指したくなる気持ちもよく分かります。
ただ、その結果として、

“お客様が求める基準”

まで、どんどん上がっていった。

Instagramが“カタログ化”した時代

スマートフォンで様々なデザインカットを見比べる愛犬家。SNS時代ならではの“比較され続けるトリミング業界”を象徴するリアルなワンシーン。

昔は、地域のトリミングサロンで、
「さっぱりしたね」
「可愛くなったね」
で成立していた部分もありました。

ですが今は違います。

Instagramを開けば、
全国のトップトリマーの作品が流れてくる時代。

しかも、それが毎日更新される。

つまり飼い主さんは、
無意識のうちに“最高品質”を見続けています。

すると、

「うちの子も、こうしてほしい」

という期待値が自然と上がる。

サロン側も、
「うちはハイクオリティです」
「デザインカットが得意です」
と打ち出す。

これ自体は差別化として正しい戦略です。
ただ、その代償として、

“新人が育ちにくい環境”

も生まれてしまった。

新人トリマーが育ちにくい理由

例えば、ホームページやInstagramに載っているのは、
ベテラントリマーによる“完成形”です。

当然、お客様もそこを見て来店されます。

とはいえ、昨日今日入った新人スタッフが、
いきなりそのレベルに到達できるわけではありません。

これは、どんな職業でも同じです。

料理人も、美容師も、大工さんも、
最初から一流ではありません。

少しずつ経験を積みながら成長していきます。
ですが今のトリミング業界は、

“成長途中”

を許されにくい空気がある。

「前回の人は良かったのに…」

実際、現場ではこんな声も耳にします。

「前回のトリマーさん、すごく良かったんだけど…」
「今回の人は、ちょっとイマイチだったかな」

もちろん、飼い主さんが悪いわけではありません。

お金を払っている以上、
期待するのは自然なことです。

ただ、サロン側としては、
新人を育てなければ未来がない。

でも、
新人に任せればクレームリスクがある。

このジレンマを、多くのお店が抱えています。

技術だけでは、人は残らない

さらに難しいのが、
トリマーという仕事は“接客業”でもあるということ。

技術だけではなく、

  • 飼い主さんとの会話
  • スタッフ同士の人間関係
  • プレッシャー
  • 指名制度
  • SNS発信
  • スピード
  • 売上

こういったものも全部背負うことになります。
しかも多くが個人店。

大企業のように、
余裕のある教育体制を組めるわけではありません。

だからこそ、

「憧れて入ったけど、現実は厳しかった」

となってしまうケースも少なくない。

“おうちケア”が大切になるかもしれない

自宅で愛犬を優しくブラッシングする飼い主さん。家庭で支えるケアの温かさと、愛犬が安心して身を委ねる穏やかな時間。

ここで誤解してほしくないのは、

「だから技術を追求するな」

という話ではありません。

素晴らしい技術を持つトリマーさんたちは、
間違いなく業界の財産です。

ただ一方で、
今後は“トリマー任せ”だけでは難しい時代になるかもしれない。

そう僕は感じています。

実際、人材不足によって、
予約が取りづらくなっている地域も増えています。

だからこそ、

“いざという時のために”

飼い主さん自身がお手入れを学んでおく。

これは、これからの時代、
すごく大切なことなのではないでしょうか。

「完璧」より、「続けられること」

少し毛並みが整いきっていなくても、笑顔で寄り添う飼い主さんと愛犬。“完璧な仕上がり”よりも、“幸せな暮らし”を感じさせる温かな日常風景。

僕はお手入れ教室で、
飼い主さんによくこんな話をします。

「100点じゃなくていいんです」

少し形が崩れてもいい。
完璧じゃなくてもいい。

大切なのは、愛犬が無理なく、
ご家庭でケアを続けられること。

そして、
トリミングサロンと上手に付き合っていくこと。

プロに全部任せるか、
全部自分でやるか。

その二択ではなく、

“間を支える文化”

が、これからは必要なのかもしれません。

まとめ

トリミングサロンの閉店が増えている背景には、
単純な「人気の有無」だけで語れない問題があります。

  • 高度化する技術競争
  • SNSによる期待値の上昇
  • 育成の難化
  • 人材不足
  • 個人店ゆえの限界

こうしたものが複雑に絡み合っています。
だからこそ今後は、

「プロに全部お願いする」

だけではなく、
飼い主さん自身も少し学ぶ。

そんな時代に入っていくのかもしれません。


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